インテリジェントな生産ソリューションで、ガスタービン用コンポーネントの生産時間を半減
Doncasters Precision Castings – Deritend 社は、焼き流し鋳造法や金属加工で製造する産業用ガスタービンエアフォイル(ニッケル・コバルトベースの超合金製)のトップメーカーです。
同社は事業の成長に力を入れており、効率的な製造やラピッドプロトタイピングを介した継続的な改善活動への積極的投資でこのスタンスを維持しています。その結果、同社の焼き流し鋳造事業を支えている加工サービスの需要が大幅に伸びてきています。この需要を受け、14 種類を超える新製品を効率的に製造するための Mazak 製工作機械や、インフラ、製造用ソフトウェアへの 200 万ポンドを超える大規模投資にいたりました。
背景
Mazak 製 5 軸マシニングセンター導入以前は、同等の作業が従来的な 3 軸マシニングセンターと高精度位置決め治具を用いて行われていました。この作業は、時間がかかるだけでなく、機械オペレーターにも高いレベルのスキルが必要でした。通常のノズル用コンポーネントの場合の段取りや加工を含んだサイクルタイムは 4 時間で、このサイクルタイムでは拡大した需要に対応できませんでした。さらに、高精度位置決め治具は時代遅れで高コストな方法とエンジニアリングチームからは考えられていました。こういった背景から、加工技術への大規模投資を行うこととなり、Mazak VORTEX i-630V/6 立形マシニングセンター 3 台の導入に踏み切ったのです。このマシニングセンターを導入したことで、加工作業をインハウスに留め、顧客に対して独力でソリューションを提供できるようになっています。
この投資の一環として、導入したマシニングセンターには、特許技術である RENGAGE™ ストレインゲージ技術を実装したレニショー製 RMP600 高精度プローブが搭載されていました。このプローブは、複雑な 3D 形状や輪郭に対して非常に優れたサブミクロンレベルの性能を有しているため、同社での作業に最適でした。しかし、導入初期段階でのアプリケーションに関しての話し合いの結果、サポートを強化する必要があることがわかり、レニショーは、自社の関連会社である Metrology Software Products (MSP) 社の協力を仰ぐことにしました。
課題
直面している課題は、right-first-time の割合を向上すること、その過程で、エラーの可能性を排除し、全体的な生産性を拡大することでした。Doncasters 社の Engineering Manager である、Ollie Macrow 氏は以下のように説明しています。「数千ポンド相当の超合金ダイキャストを扱う際には、問題なく加工できるという確信が、加工前に欲しいのです。コストも懸念事項の 1 つです。ダイキャストのコストだけでなく、失われる時間、そして素材を考慮すると工具も比較的大きなコストと言えます。さらに、再加工できないコンポーネントも一定数あるため、加工後に不具合ということになると、スクラップにするしかありません。パーツをプローブ計測する必要があることは認識していましたが、高精度位置決め治具を使わずプローブ計測を適切に行う方法がわかりませんでした」この問題の要因の 1 つに、同社にはプローブ計測の経験が比較的少なかったということが挙げられます。基礎的な調整や平面のアライメントにしかプローブ計測を使ったことがなかったのです。そのため、レニショーからのインプットが不可欠でした。
また、高コストで時間のかかる高精度位置決め治具を使わないようにしたい、とも Doncasters 社は考えていました。「高精度位置決め治具にはたくさんの問題が付きまといます。コストがかかり、パーツを適切にセットするには高いスキルが必要です。また、損傷するとパーツのアライメントができなくなって加工そのものを行うことができなくなるため、高精度位置決め治具を高いレベルで維持管理する必要があり、これにもさらに時間とコストがかかります。当社の課題として、この高精度位置決め治具を、シンプルなモジュラータイプのシステムと置き換えて、段取り工程における人の介入量を減らすことがありました」(Ollie 氏)もちろん、製造目標を達成する必要もあったため、段取り時間の短縮も、Mazak 製工作機械の導入の際の重要な検討事案でした。新しく導入した機械を使ってインハウス加工の大部分を行う一方で、依然として二次作業を外部委託する必要がありました。しかし、生産性を向上することで、外部委託していた作業を後々インハウスに戻す目的もあります。「生産性にプラスの影響もでます。中で加工を行うことができれば、パーツを出荷する必要も、出荷したパーツが戻ってくるまで 2 日待つ必要もなくなります」(Ollie 氏)
レニショーさんと MSP さんの助けがなければ、ダイキャストの加工を首尾よくできていなかっただろうと、強く感じています。当社が受けたサポートはすばらしいものでした。電話をすれば応えてくれましたし、必要なときには現場に来てくれました。
Doncasters Precision Castings – Deritend 社(英国)
解決策
レニショーの Applications Engineer がプロジェクトを見直した結果、MSP 社の ソフトウェアである NC-PerfectPart と NC-Checker を RMP600 と組み合わせることが Doncasters 社の要望を満たす最良のソリューションであるという結論にいたりました。このハードウェアと革新的なソフトウェアを組み合わせることで、パーツ位置決め時の誤差を特定することができ、また、パーツ切削前に機械の幾何学的な性能を確認することができます。まず、工作機械を「マッピング」し、ベンチマークを作成します。工作機械の 5 軸性能をチェックする前に、NC-Checker で、プローブの性能をチェックします。このチェックで、パーツセットアップや金属切削前に、プローブ計測や加工性能のあらゆる点が、指定の公差内に収まっているか確認します。機械チェックは、所要時間がわずか数分なため、定期的に行うことができます。徐々に、機械が設定したパラメータどおりに確実に動作し、正確なパーツを製造するようになります。
NC-PerfectPart は、工作機械上のパーツアライメント不良が原因で発生した問題に対処します。これは、自由形状や複雑な形状を持つワークや、5 軸加工対象のワークを扱う際には特に重要です。これらのパーツのセットアップは時間がかかる作業であり、また正確にかつ常に同じように行うのが非常に難しい作業です。この難題は、対象ワークの CAD ファイルから生成したプログラムを使った、RMP600 によるプローブ計測で解決できます。
この初期計測の時点から、アライメントを確立し、機械内のパーツの位置決め誤差を排除します。その後、このアライメントを機械コントローラにアップロードして補正量を自動算出し、パーツに完璧にあったパートプログラムを生成します。セットアップが自動化されるため、治具は工程内で必要不可欠な要素でなくなっただけでなく、手作業によるセットアップ誤差もなくなり、最も複雑なワークのセットアップに要する時間でさえ数分に短縮されます。
さらに、素材の状態や、パレットロードシステム、温度といった要素もすべて、加工工程の初期段階で加味することができるため、不良品を生産してしまうリスクがさらに下がります。
金属加工後には、完成品を工作機械から取り外して CMM で寸法測定する前に、NC-PerfectPart で精度を確認することができます。
結果
RMP600 と MSP 社のソフトウェア導入前は、通常のガスタービンノズルのセットアップと加工に 4 時間要していましたが、現在は同じパーツのプローブ計測、加工そして寸法計測が、2 時間以内に完了しています。つまり、Doncasters 社の生産性は 50% アップしています。複雑なワークには、加工時間として最長で 8 時間、そして加工工程を監督する高い技術力を持つオペレーターが必要でした。この加工時間も今では、シンプルなワークと同等の 2 時間にまで短縮できており、一層のコスト効果を生み出しています。レニショーと MSP 社と連携した中で、Doncasters 社はアライメントシステムを強化し、総体的な成果をあげています。機上計測結果、CMM 測定結果およびブルーライトスキャニングシステムのデータ間の連携もまた強化されています。
このような好結果を受けて、Ollie Macrow 氏は以下のように述べています。「当社での出来事はとてもポジティブなことで、レニショーさんと MSP さんのサポートがなければ、成しえなかったでしょう。
工作機械の新規導入を決めたときは、Mazak さんと膝を突き合わせて『どうすればいいでしょうか』と話していました。Mazak さんも、当時の段取りでは実現できると思っていなかったところに、レニショーさんが加わり、MSP さんと連携してソリューションを提供してくれました。right-first-time の割合を大幅に高められたことで、当社の顧客からはお褒めの言葉をもらっています。レニショーさんと MSP さんの助けがなければ、ダイキャストの加工を首尾よくできていなかっただろうと、強く感じています。当社が受けたサポートはすばらしいものでした。電話をすれば応えてくれましたし、必要なときには現場に来てくれました」