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レニショーが Empire Cycles のために初めて 3D 印刷により製造した金属製自転車フレーム

レニショーは、金属パーツ印刷用の金属ベースの積層造形機を製造する英国唯一の企業ですが、この度、自転車の設計と製造において英国をリードする自転車メーカーと協力して、世界で初めて 3D 印刷により金属製の自転車フレームを製作しました。

Empire Cycles

Empire Cycles は、独自の自転車の設計と製造を手がけるイギリス北西部の自転車メーカーです。英国の優れたエンジニアリング技術を使用して優れた製品を製作することに情熱をかける同社では、世界のマウンテンバイクとダウンヒルの愛好者に革新的なデザインのマウンテンバイクを提供しています。レニショーでは、Empire Cycles と協力して積層造形用に自転車の設計を最適化し、無駄の多い支持構造で使用される多くの下向きの面を排除しました。

Empire Cycles は、レニショーの積層造形技術を活用したマウンテンバイクを設計して、トポロジを最適化することにより、強度と軽量性という両特性を兼ね備えるチタン製フレームを開発しました。この新しいフレームは、以前のものに比べて 33% の軽量化を達成しています。このフレームは、チタン合金を使用してセクションごとに積層造形した後、セクションを接着したものです。これには、いくつかのメリットがあります。

設計の自由

  • 短時間に繰返し製造できるため、製造を開始するまで設計上の改良を加えることができます
  • トポロジの最適化から導かれた形状を製作できます
  • 究極のカスタム化 - 製造バッチと同じように簡単に単体パーツを製作できます

製造

  • 内部強化機能を活かした複雑な形状
  • 空洞構造
  • 所有者名などの機能を組み込むことができます

パフォーマンス - チタン合金

  • アルミ合金のものよりも 44% 軽量化されたシートポストブラケット
  • 優れた強度 - EN 14766 に準拠してテスト
  • 耐腐食性のため、長持ち

トポロジの最適化とは

ギリシャ語で場所を意味する「topo」という言葉から付けられたトポロジの最適化ソフトウェアは、通常対話型手順と有限要素解析を使用して、材料の「論理的な場所」を判断するために使用されるプログラムの総称です。これを使用すると、耐荷用に最適化された設計を達成するまで、低応力領域から材料が排除されます。これにより、軽量性(低容量のため)と強度に優れたモデルが得られます。積層造形を使用すると、これらの形状の製造につきまとう昔からの課題を克服することができ、物理的 3D モデルを実現することができます。レニショーでは、Empire Cycles と協力して積層造形用に自転車の設計を最適化し、無駄の多い支持構造で使用される多くの下向きの面を排除しました。

強度

チタン合金は、積層造形により処理した場合、900MPa 以上という高い極限引張強さ(UTS)を備えており、99.7% 以上のほぼ完全な密度を達成することができます。これは鋳造よりも優れており、孔も小さく球形であるため、強度にほとんど影響がありません。このプロジェクトは完全な機能性を持つ自転車を製造することであるため、マウンテンバイクの EN 14766 基準に従ってシートポストブラケットをテストしたところ、1,200N の 5 万回のサイクルに耐えることができました。このテストは、基準の 6 倍の長さに渡って継続しましたが、それでも障害が発生しませんでした。今後も引き続き完成した自転車フレームのテストを行う予定で、Bureau Veritas UK のラボだけでなく、スワンジー大学との協力によりポータブルセンサーを使用して、山腹で使われるマウンテンバイクでもテストが行われています。

軽量

自転車フレーム全体はセクションに分かれており、シートポストブラケットを 1 枚の製造プレート上に配置し、一度に製造します。チタン合金(相対密度約 4 g/cm3)は、アルミ合金(3 g/cm3)よりも密度が高くなっています。従って、チタン合金を使用したパーツをアルミ合金のパーツよりも軽量化する唯一の手段は、設計を大幅に変更して、パーツ全体の強度に寄与しないすべての材料を排除することです。

以前のアルミ合金製シートポストブラケットは 360g ですが、空洞のチタン合金製のものは 200g で、44% の軽量化を達成しています。これは単に初回製造のもので、解析とテストを繰り返すことにより更なる軽量化が望めます。以前の自転車フレームの重量は 2100g でしたが、積層造形により設計変更したものは、1400g まで下がり、33% 軽量化されています。

カーボンファイバーを使用したより軽量な自転車もありますが、Empire Cycles の取締役、Chris Williams 氏はこの点について既に調査しており、次のように説明しています。「カーボンファイバーの耐久性は金属製自転車に匹敵するものではなく、ロードバイクには優れているものの、マウンテンバイクで山腹を駆け下りる場合には、フレームが損傷する危険性があります。当社では、製品の欠陥による保証請求がないよう、自転車には最高のエンジニアリング技術を搭載しています。」

3D 印刷によるチタン合金製フレームとシートポストブラケットを搭載した自転車

プロジェクトの管理方法

Chris Williams 氏は、レニショーにアプローチする前に、現在の自転車のフルサイズの 3D 印刷レプリカを製造していたため、何が必要かを的確に理解していました。レニショーは当初、シートポストブラケットのみの最適化と製造に協力することに同意しましたが、これに成功した後は、フレーム全体の可能性を確信しました。Chris Williams 氏は、レニショーのアプリケーションチームによる製造に適した設計に関するガイダンスに基づいて設計を更新し、フレームをセクションに分けたため、AM250 の製造長 300mm を完全に活用することができます。

Empire Cycles の主要メリットは、この製造方法から得られるパフォーマンス上の利点です。この設計は、中小メーカーには不可能なツーリングへの投資を必要とすることなく、オートバイや車に活用されるプレス鋼板の「モノコック」構造のすべての利点を活用することができます。パフォーマンスの可能性については、まだ完全に調査したわけではありませんが、さらに開発を続けることが期待されています。ツーリングが必要ないため、継続的な設計改良を簡単に行うことができ、コンポーネントのコストは製造量と複雑性に依存するため、一部の軽量パーツはわずかなコストで製造することができます。

また、接着方法の調査により、Mouldlife 社から接着剤が、特殊技術を備える 3M 社からテスト設備がそれぞれ提供されることになりました。弊社では、各社と協力して、特定の表面仕上げなどの接着方法の改善を行うために開発を続ける予定です。さらに、自転車の完成に必要な車輪、ドライブトレーン、コンポーネントは Hope Technology Ltd から提供されました。このプロジェクトでは、顧客と密接に協力することにより、素晴らしい結果が得られることが浮き彫りになりました。積層造形を活用できるコンポーネントがあれば、詳細情報を提供しますので、レニショーの各国事務所までお問い合わせください。