FORTiS™ エンコーダとレーザーキャリブレーションシステム、工作機械の高精度化に貢献
工作機械の精度はさまざまな環境要因や機械要因に左右される。パーツの熱膨張、ガイドレールやベアリングの不具合などである。
これらの要因を抑えて機械の精度を確保するために、設計でさまざまな工夫が施される。また、機械精度は、アセンブリ工程を最適化して熱膨張による誤差を補正すること、そして高性能な位置フィードバック/モーションコントロールシステムを採用することでも向上させることができる。
機械の組付け誤差は、品質テストにレーザーキャリブレーションシステムを使用することで抑制できる。また、レーザーシステムは出荷前の精度検査と最適化にも使えるため、品質向上にも活用が可能である。
優れたモーションコントロールを工作機械に実装するために、エンコーダによるクローズドループシステムを採用し、直線軸からダイレクトに位置情報を取得することも少なくない。
HEAKE Precision Technology 社 (以下、HEAKE 社) が自社の最新マシニングセンターに採用したのが、レニショーの FORTiS™ クローズドタイプリニアエンコーダである。さらにアセンブリ工程の品質管理には、レニショーの XK10 アライメントレーザーシステムを導入した。
課題
設計から納品、据付けに至るまでのすべての段階で、CNC 工作機械の品質は確保されなければならない。品質管理試験は機械筐体やフレームの検査のみならず、ソフトウェアのデバッグ、位置決め精度検査、切削テストなども含まれ、
サプライチェーン全体で、材料や部品すべてに厳格な検査体制が確立されている。工作機械には高品質な鋳物が欠かせない。フレームの剛性と安定性が左右されるからである。
工作機械の製造工程の完了後、試運転やテストが実施され、顧客が求める基準に品質や精度が則しているかどうかの確認が行われる。そして使える状態であることを示すために、どの機械もテストデータがすべて記録されて文書化される。
高精度とハイパフォーマンスを実現するために、最先端の測定機器を用いる機械メーカーも多い。
HEAKE vertical machining centre
Installing the FORTiS encoder解決策
クローズドループによる位置フィードバック
HEAKE 社はレニショーの FORTiS クローズドタイプエンコーダを初期に導入した企業である。最初に組み込んだのが大型の 4 軸立形マシニングセンターの LV1265 だ。同機は安定した構造と大型の機械ベッドから、顧客から高い評価を得ている機種である。FORTiS の導入で成果を挙げられたことから、同社は他の機種にも FORTiS を採用していくことを決定した。
HEAKE 社製工作機械の設計上の特徴として挙げられるのが「フルサポート」構造の採用である。X 軸方向に横 (左右) 移動したときに生じる機械ベッドのオーバーハングによる問題を抑えており、機械精度と剛性を高めている。そして精度のさらなる向上に一役買っているのが FORTiS である。
HEAKE 社の機械には FANUC、Mitsubishi、Siemens 製のコントローラが採用されており、そのいずれとも FORTIS は互換性がある。軸長も 640mm から 2140mm 超まで同社製機械のすべてをカバーしている。また、スケール精度に 3m と 5m/m の 2 種類をラインナップしている。
HEAKE 社の最新機種、LH800 横形マシニングセンターでは、直線軸 3 軸に FORTiS-S™ が標準で搭載されている。
直線軸 3 軸、移動式コラム、ウォーム駆動ロータリテーブル、自社製制御ソフトウェア (特許取得) が特徴の機械で、ロータリテーブルの位置決め精度は 0.001° (4arc 秒以下) を誇る。
FORTiS エンコーダの高性能と工作機械業界における高評価から、HEAKE 社はレニショーと協力体制を築いている。
HEAKE 社で General Manager を務める Chen Qirui 氏は、FORTiS の採用に至った経緯を以下のように話す。FORTiS エンコーダの仕様は他の競合品と比べても遜色なくトップクラスでしたし、精度という点ではベストな製品です。
それに取付けも簡単です。セットアップ LED を見ながら作業すれば、1 軸あたり平均 7 分で取付けが終わります。直線軸が 3 軸ある LH800 なら、全部で 30 分もかかりません。以前テストしたことのある違うエンコーダだと、この倍はかかっていました。取付け後には、レニショーさんの診断ツールである ADTa を使ってエンコーダを再チェックし、キャリブレーションデータを収集します。納品時などにお客様に参考にしていただくためです。
今までのクローズドタイプエンコーダは、ばね、ガイドレール、ローラベアリングなどを内蔵しており、これらの部品がヒステリシスの原因になり、そして摩耗します。FORTiS は非接触式の設計のため、ヒステリシスが大幅に抑えられており、耐久性も大幅に向上しています。従来品にあった不満点や欠点の多くが FORTiS には見られません。
Chen 氏は、生産ラインでの XK10 アライメントレーザーシステムの効果についても強調する。
XK10 は土台となる鋳物の据付け作業から使っています。精度よく組み付けて、重要なレールの真直度と平行度を確保するのが目的です。以前は、直角定規やダイヤルゲージといった昔ながらの道具で機械精度を測っていましたが、煩わしいし作業にも時間がかかっていました。測定作業 1 回に 2 人か 3 人が必要になることがほとんどで、時間もコストも無駄になっていました。
XK10 レーザーシステムを導入してからは、すべての作業を 1 人で完結できます。XK10 は軽量で持運びができるため、1 台で生産ライン内の複数の機械に対応できます。それにソフトウェアのインターフェースも操作しやすくて助かります。詳細なデータのレポートを作成できるので、お客様に安心して機械を使っていただけます。
機械の組立て後、そして客先への納品前、HEAKE 社ではレニショーの XL-80 レーザー干渉計で最終チェックを行い、必要に応じて誤差補正を行っている。「レニショーさんのキャリブレーション製品は長年にわたって高い評価を得ている商品です。XL-80 のようなレーザー干渉計は測定の標準として長い間存在感を示していて、XL-80 を使って工作機械の検証をしておけば、お客様の信頼を勝ち取ることができ、納品時に不必要な問題が起こることもありません」(Chen 氏)
![Heake Taiwan - FORTiS XK10 case study image [Language Independent]](/media/img/gen/9eb2ca6fed414f74ac8857483f50133a.jpg)
XK10 system measurement on machine rails
レーザーアライメントシステム
レニショー XK10 アライメントレーザーシステム (測定距離 30m) は、工作機械のアセンブリ工程における誤差の低減と、組付け後の精度検証や最適化に使用するシステムで、
工作機械の加工精度の向上に効果が期待できる。
XK10 は複数種類の幾何誤差の測定と記録が可能で、従来の測定ツールに見られたデメリットを解消している。例えば直角定規では軸長に制約がある。2m を超える軸の機械を測定しようと思うと複数回に分けて測定する必要があり、精度に影響が出る。
30m を超える軸の真直度測定の場合でも、XK10 ならデータスティッチ機能で測定結果を組み合わせることができる。これまでは測定結果を手で記録する必要があったため、測定結果のつなぎ合わせは誤差が増すリスクがあった。XK10 の強みはここにある。データをタブレット内部に保存し、レポートを自動で生成することができる。
また、オートコリメータなどは複雑で、平行度などの複数軸の測定のセットアップに時間がかかってしまうが、XK10 の平行度測定なら機械アセンブリに最適で、ユーザーのニーズを満たすことができる。
結果
そして同社の工作機械には、位置フィードバックシステムに FORTiS-S クローズドタイプエンコーダが採用されており、合わせてレニショーの業界先端のプローブ計測システムやシャンク、工作機械用周辺機器も搭載されている。
「FORTiS とレニショー製キャリブレーション製品は、期待以上に相乗効果を発揮してくれました。工作機械の総合的なパフォーマンスを最大限まで高めることができただけでなく、製造時の効率も劇的に向上しました。それにレニショーさんのテクニカルチームによる技術サポートにはほんとうに助けられています。レニショーさんのワンストップサービスのおかげでテスト作業の効率化が図れましたし、ミスがなくなりました。他のサプライヤは対応が遅れていると感じることもありますが、レニショーさんはそんなことはありません」
