オンマシンユーザーインターフェースでモールドベースの生産性を大幅アップ
プラスチック射出成形に用いられるモールドベースの市場が変化しています。プラスチックパーツメーカーによる、サイズ、形状、表面仕上げがさまざまな、多種多様な短寿命製品の生産が増加しています。これらの生産にはそれ専用のモールドベースが不可欠です。
精密なモールドベースのトップメーカーである GM Enterprise 社。同社は急速に拡大する顧客の需要に応えるために、生産能力を増強する必要がありました。さらに、生産量を拡大してリードタイムを短縮すると同時に、ヒューマンエラーの可能性を排除する必要もありました。
目標を達成するために、また新たな市場機会をつかむために、同社は CNC 工作機械の新規導入に際し、レニショー製のオンマシングラフィカルユーザーインターフェースと無線信号伝達方式の工具計測プローブを指名しました。
背景
1982 年設立の GM Enterprise 社は、プラスチック射出成形加工において核となる、複数のパーツから構成される非常に複合的なアセンブリであるモールドベースの台湾トップメーカーと認知されています。GM Enterprise 社の台湾市場での取引高が全取引高の 6 割を占めており、その一方で重要な輸出先には日本のマブチモータ、フタバ、YKK、香港の SHL tooling などがあります。
加工公差 ±5μm 以内、複雑なモールドベースの製造期間 3 日以内、スクラップ率の最小限化、さらに生産高の拡張、これらが同社が常に掲げている目標です。
カスタムなモールドベースの設計と製造において高い精度を達成するために、GM Enterprise 社は数十年にわたりレニショーの工作機械用プローブを導入して CNC 工作機械の精度を確保してきました。
同社は、赤外線通信式の MP10 プローブ、ハードワイヤ式の TS27R ツールセッターおよび無線式の RMP60 プローブなどのさまざまなレニショー工作機械用プローブを搭載した 6 台の CNC 工作機械を運用していました。
これらのプローブを導入していたことで、概して 1 週間あたり 4 個のセットアップ誤差や計測誤差を低減できていたため、スクラップを大幅に低減し、生産量を拡大していました。
エラーをゼロにする、という強い信念を抱く GM Enterprise 社は、競争の激しい台湾国内市場および開拓中の海外市場両方において、高品質と高精度という非常に高い評価を得るにいたりました。
モールドベースとは
モールドベースはプラスチック射出成形機において、2 個のパーツ(コアとキャビティ)から成る金型をしっかりと固定するために使用するもので、クランプ、射出、取出しという連続した過程において極めて重要な役割を担います。
モールドベースの前半分にあるサポートプレートによりモールドキャビティが固定されます。また、キャビティには、射出された高温の液体状のプラスチックが通過するスプルーブッシュや、射出ノズルとの位置合わせを確保するためのロケートリングがあります。
モールドベースの後ろ半分は取出しシステムで構成されており、取出しシステムは内側でモールドコアと、外側でサポートプレートと密着します。
成形機のクランピングユニットによりモールドコアとキャビティが分離する際に、エジェクタバーが取出しシステムを動かし、冷却されて固まったプラスチックパーツを開いたモールドから押し出します。
課題
大量生産が依然としてプラスチック射出成形産業の重要な特色である一方で、GM Enterprise 社は多品種少量生産への傾向が高まりつつあることを認識していました。
結果として、同社の高精度カスタムモールドベースへの需要が急速に高まり、新たな輸出先からは徐々にリードタイムの短縮と品質保証の強化を求められるようになりました。
この製造需要の高まりに直面し、生産の遅延を引き起こしていた原因が、機械オペレーターが手作業でワークをセットアップするために要していた時間ということがわかりました。
同時に、作業時間が延び、カスタムモールドベースの製造へのターンアラウンド高速化の需要があったことで、セットアップ時と計測時のヒューマンエラーの可能性が高くなっていました。加えて、損傷したプローブやスクラップになったワークに付加的なコストもかかっていました。
変化する市場のトレンドや新たなビジネスチャンスに応えるために、GM Enterprise 社はヒューマンエラーの削減と生産量の拡大を短期間で進めつつ、生産設備の増強を進める必要がありました。
GM Enterprise 社(台湾)
解決策
台湾工場向けの CNC 工作機械 2 台を取得する際、GM Enterprise 社は、工具/パーツのセットアップ/計測および工作機械診断に用いるレニショーグラフィカルユーザーインターフェース (GUI) の導入を決断しました。
工作機械の自動化ソリューションの提供に広く実績を残しているレニショーは、Bosch Rexroth、ファナック、Heidenhain、マザック、オークマそして Siemens といった市場のトップを走る幅広いコントローラメーカーのコントローラに対応した GUI 製品を各種取り揃えています。また様々な言語に対応しています。
今回の場合では、YCM ガントリー式立形マシニングセンターに統合したオンマシン GUI 製品が、GM Enterprise 社の従来的な工作機械プログラミングプロセスの大幅な簡易化に最初に貢献し、その結果生産量が上昇しました。
直感的で、ユーザーフレンドリーなソフトウェア環境を提供する GUI は GM Enterprise 社の機械オペレーターを、プローブのキャリブレーションやワークおよび工具計測、寸法計測といった標準的な計測操作を段階的にガイドするよう構成されていました。
GUI 製品が複数の手動セットアップ作業を排除し、使い勝手を向上したことで、従来の工作機械プログラミングに関連した問題が解消し、時間が短縮しました。さらに、重要なこととして、工作機械オペレーターの大規模なプログラミングトレーニングの必要性もなくなりました。
レニショー製のオンマシン GUI 製品の導入と並行して、GM Enterprise 社は、より高いレベルの自由度を得るために、新しい工作機械にケーブルフリーのツールセッター RTS の導入も決めました。
GM Enterprise 社にとって初となる無線信号伝達方式ツールセッター RTS は、工具折損検出と ±1μm の繰り返し精度による工具長および直径の高速検出が可能で、取付け方法の幅が広く、機械環境による制約にとらわれません。
結果
新規導入した機械の運用 1 年目で、GM Enterprise 社は生産性を 30% 向上させました。この劇的な改善を General Manager の Shen Ming Pao 氏はレニショー製のオンマシン GUI が担った重要な役割のおかげであると考えています。
「GUI を使い始めてすぐに、当社の設計担当者は CNC 工作機械の操作はオペレーターに任せて、プログラム開発に注力できるようになりました。より効率的に作業できるようになったのです」(Shen Ming Pao 氏)
さらに、Shen 氏は、機械オペレーターたちが CNC 工作機械用プローブを使う際に感じていた一定の不安を、GUI がどのように減らしたかについて説明してくれました。さまざまな国籍の人間が入り混じる職場での言語の違いによって強くなる不安です。
「当社のような小さな会社にとって、工作機械用プローブにかかるコストは小さいわけではもちろんありませんので、オペレーターたちの多くは誤ってプローブを損傷させることを不安に感じていました。GUI の直感的で使いやすい特徴と、それと組み合わさった保護設定のおかげで、そんな心配は不要になりました。今では安心して使っており、オペレーターたちも不安に感じていません」(Shen 氏)
GM Enterprise 社のレニショー機器への投資と、その投資によって向上した生産能力は、顧客とスタッフ両方から好評を得ています。同社の現在のモールドベースの年間製造数はおよそ 2,500 個に達し、それぞれレニショー製の GUI と工具計測プローブを搭載した CNC 工作機械を 3 台発注しています。