変形性関節症における軟骨の病変をラマン分光によって特定できる可能性
2021 年 10 月 28 日
変形性関節炎は、高齢者における慢性障害の最大の原因です。世界保健機関が発表した 2003 年の推定によると、60 歳を超える男性の 9.6%、女性の 18% がこの疾患に罹患しています i。軟骨変性の初期症状を早期に検出できれば、患者の治療を大きく改善できる可能性があります。
ロンドン大学、王立獣医大学、チャリングクロス病院の研究者および臨床医で構成され、Riana Gaifulina 博士をリーダーとするグループがこの疾患を調査し、軟骨の侵食度と変形性関節症の病状全体をラマン分光によって判断できることを実証しました。変形性関節症変性の早期発見と早期治療につながる可能性があります。
非破壊方式のラマン分光により、軟骨成分の小さな分子変化を速やかに検出できます。このグループは、レニショーの inVia™ コンフォーカルラマンマイクロスコープを使って軟骨表面の単一スペクトルを取得し、軟骨サンプル中の標的分子である硫酸化グリコサミノグリカン (sGAG) を探しました。その結果、試料を包括的かつ描写的に分析できるようになり、軟骨退化の進行度を評価できるようになりました。研究者たちは、レニショーの WiRE™ カーブフィッティングアルゴリズムを用いて 980cm-1~1120cm-1 のスペクトル範囲、特に 1063:1003cm-1 ピーク比を解析することにより、sGAG S-O ストレッチ結合を後期段階の軟骨損傷の指標と特定できました。
等級 0 から 4 の軟骨試料から取得したラマンスペクトルで、980cm-1~1120cm-1 スペクトル範囲にわたってカーブフィッティングが適用されています。1063:1003cm-1 ピーク比は、等級 4 の疾患増悪で有意な差があることを示しています。
加えて、高波数領域と指紋領域の両方で主成分分析 (PCA) を実施したところ、高波数領域は初期疾患を容易に識別できることがわかりました。
どのピークが病気を示すかを把握した研究者はその後、日常使用に最適であるということで、レニショー RA816 生物学用分析装置に切り替えました。研究者たちは、レニショーの高速 StreamLine™ マッピングテクノロジーを使用して、複数の試料内の軟骨の健康部位と疾患部位の高速ラマンイメージングを実施しました。その結果、ラマンマッピングによって、健康な軟骨と一見正常に見える関節軟骨の違いに加え、軟骨成分の空間分布も明らかにできることを発見しました。
加えて、特注の光学プローブを inVia システムに連結しました。これにより、膝関節鏡検査実施時に、院内で体内ラマン分析ができる可能性を初めて探れるようになりました。研究者たちは、目視では正常な同一関節内の軟骨と病変した軟骨から 1 本のスペクトルを取得しました。解釈可能なスペクトルは、2 分とかからず取得に至りました。この研究により、膝関節鏡検査を受けている患者の生体内でラマンデータを取得できることが実証されました。ただし、単一ピーク比の分析だと、予測分類には不十分である可能性が高く、より包括的な多変量スペクトル分析が必要であることが示されました。
今回の研究では、軟骨成分の小さな分子変化を検出できることから、ラマン分光が軟骨変性の評価に有効な方法である可能性を示しました。これにより、臨床医は変形性関節症軟骨の分子変化を早期に発見できるようになり、この消耗性疾患の治療効果を高めるのに必要な情報を得ることができます。
臨床分光学ジャーナルに掲載されている論文について詳しくは、https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666054721000077 を参照してください。
これは、CC BY ラインセンス (http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/) 下でのオープンアクセス記事です。
免責事項: レニショーの inVia ラマンマイクロスコープおよび RA816 生物学用分析装置は研究用途専用 (RUO) であり、診断手順には使用できません。