介入時間を大幅低減したレニショープローブ
Equinox 3D 社は、幅広い産業におけるグラスファイバー製品の専門メーカーとして、複雑な特注設計の依頼をしばしば請け負っています。Faversham(イギリス)に本社を構える Equinox 3D 社は、レニショーのプローブ計測システムを自社の製造工程に導入したことで、短時間で正確かつ確実に顧客のどんな特異な要求にも応えられます。
背景
Equinox Products 社は自動車や建築業、さらにはアーケードゲーム機メーカーまで、幅広い分野の顧客向けのグラスファイバー製品メーカーとして歩み始めました。金型が常に必要であったことから Equinox 3D 社の設立に至り、現在では 4 軸 CNC 加工や 3D スキャニング、リバースエンジニアリング、CAD 設計、非金型関連のエンジニアリングを手がけるにまで発展しています。
レニショー製ワーク計測プローブ OMP40 とツールセッター TS27R を装備した立形マシニングセンター XYZ 1020 を導入したことで Equinox 3D 社の生産性は飛躍的に向上しました。求める公差レベルはミクロンレベルではなく ±0.1mm レベルであるものの、プローブ計測は製造工程において有益なオプションであると同社に認識されています。Equinox 3D 社の製品はすべて目に見え触って確かめられるものであるため、鍵となるのは見た目の美しさです。金型の大半が複数の部品から構成されていることから、正確なアライメントが極めて重要です。以前では、複数部品から成る金型の作成には、研磨、組立および仕上に何時間もの手作業を要していました。これにより工程にかかる時間的制約とコストが増すことが多く、時間こそが Equinox 3D 社が必要としていたことでした。その典型的な例が、近年携わったスピードが重視されたプロジェクトです。
課題
「Emilia-Romagna 州の Piacenza にある Castell'Arquato でイタリアのスーパーカーやスーパーバイク、自転車の丘登りをトリとして 2 日間にわたって開催されるイベント Best of Italy Festival の主催者たちが我々に突然接触してきたのです。マセラティ製のコンセプトカー Super Monoposto を再作成したいというのが彼らの話でした。」(Equinox 3D 社の Technical Director、Darren George 氏)
折りたたみ式ルーフとフロントウィンドウをアングルグラインダーで取り除いた標準型の Maserati 4200 を基に作業が始まりました。「イベントが予定されている日にちや工数が明確な工程を考慮に入れると、モデルやテレビタレントとして活躍している有名人ドライバー Jodie Kidd 氏が参加して Brooklands で行われるお披露目まで、運転席周り用の Monoposto のグラスファイバー製カバーを新しく設計・作製するのに我々に残された時間は数週間しかありませんでした。」(Darren George 氏)
車体後部からキャノピーが広がって助手席を覆い、ドライバーだけが外に出るようになっていました。これに対して、Equinox 3D 社としては、合計で 16 個の部品にわかれた型を加工する必要にせまられました。さらに、グラスファイバーの金型が最低限の手仕上げですむよう、それら各部品がお互いに正確にはまり合うように作製する必要がありました。
使いやすさと CAD データに対してものが実際にどこにあるかを知ることで達成できる精度は非常に価値があり、プローブ計測を CAD データと組み合わせることは我々にとって容易な作業です。この製品を指定された位置に装着する必要がありましたが、プローブ計測のおかげで、この点について問題がないことを確信できました。
Equinox 3D 社(イギリス)
解決策
レニショー製ワーク計測用プローブ OMP40 が 密度 0.7 の PU モデリングボードの 16 個の部品それぞれのデータムの設定に採用されました。プローブ計測を採用したことで、データムの設定に要した時間は、ブロックあたり約 1 分でした。以前では、X 軸と Y 軸のデータムを設定するだけで 3~4 分かかっており、Z 軸にいたっては 5 分ほどかかっていました。
つまり、Equinox 3D 社はレニショーのプローブを導入したことで、セットアップ時間だけで 3 時間ほど短縮できたのです。プローブ計測は、問題となっていた工程に時間的な制約があったため、特に効果的でした。「スケジュール通り金型を製作するには、10 日間以上休みなく機械を稼働させなければなりませんでした。つまり、夜中に工場に出向いて次に加工するブロックをセットアップする必要があったのです。夜中にデータムを自動的に設定できたというのは、非常に助かりました。」(Darren George 氏)
生産の大半が自由形状によるものであることを考えれば、Equinox 3D 社の加工後のオンマシンパーツ計測にも OMP40 は大いに役に立っています。OMP40 は、パーツを機械から取り外す前に、CAD データとデータム点が一致するかどうかの確認に用いられています。同様に、Equinox 3D 社では、レニショーのツールセッター TS27R も導入しており、工程中のツールオフセットの確認や変更に使用しています。これもまた、再加工の低減に貢献しています。結果
OMP40 を導入したことで機械上での加工時間そのものが大幅に短縮された一方で、16 個の部品を組み立てた際に最も大きく時間短縮の効果が表れました。Darren George 氏の試算によると、この種類と大きさの金型では、手仕上げに通常 1~2 日かかるとのことでした。この試算も初期加工の精密さがあってこそのものであり、別の言い方をするのであれば、隣り合うセクション同士のずれが最低限に抑えられており、組立が容易であったと言えます。
「この作業では時間が最も重要な要素であり、仕上げも塗装も済んだ Monoposto のキャノピーを 12 時間も予定より早く納品することができたのです。プローブ計測がなければ不可能だったでしょう。今回のプロジェクトは 1 回のチャンスしかなく、対応する CAD データのない 3D 形状にはめ込む必要がある、長さ 2.4m の製品のおかげでこの公差に関する問題にフォーカスすることになりました。ミクロンレベルでの作業はしていないにもかかわらず、この製品を指定された位置に装着する必要がありましたが、プローブ計測のおかげで、この点について問題がないことを確信できました。」(Darren George 氏)
また、Equinox 3D 社では 3D 非接触式スキャニング技術も採用していましたが、これでは小さい内側形状に制限がある場合があり、ここでも正確にデータムを計測できたのは OMP40 でした。この OMP40 の能力は、入り組んだパーツをリバースエンジニアリングする際に特に威力を発揮します。レニショーのプローブ計測システムを導入していなかったとしたら、キットカーのギアボックス用ベルハウジングの生産に関わっている新しいプロジェクトが、非常に困難なものになっていたことでしょう。