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RESOLUTE™ で RF アンテナの位置決め精度と分解能が 100 倍以上改善

背景

Pacific Antenna Systems 社は、1~110GHz の無線周波数帯を使う最新のアンテナシステムの設計と開発、組立て、製造を手掛ける企業である。同社の製品は、高分解能レーダー、人工衛星システム (SATCOM) の高速データ通信、ドローン対策用の高出力マイクロ波システムなどで使われている。

アンテナの動作において、対象物に RF 波を正確にあてることが基本となる。

Pacific Antenna Systems 社は、用途に応じたさまざまな電気機械設計のアンテナを製造している。そして、各動作軸 (ジンバル) には、絶対精度と繰り返し精度を確保するためにロータリエンコーダが取り付けられている。

航空機用システムは、0℃以下の温度、RF ノイズ、大きな機械振動など過酷な環境条件に置かれるため、最適なエンコーダを見つけることは簡単ではない。

PAS 社の旧型のアンテナシステムは、精度が低い、RF 干渉耐性 (RFI) と振動除去性能が低いなど、エンコーダの性能に問題を抱えていたが、

レニショーのエンコーダ製品により、PAS 社のサーボ制御ループの位置決め精度と分解能は 2 桁以上向上した。

当社のレーダー製品、見通し内アンテナおよび SATCOM アンテナ、高出力マイクロ波製品には、RESOLUTE エンコーダだけを使用しています。高精度かつ高分解能で、制御ループに使用できるからです。

Pacific Antenna Systems 社 (アメリカ合衆国)

課題

航空機用レーダーシステムや無線通信システムは軽量さとコンパクトさ、さらには高性能が求められる。同時に、組立ての容易さも必要な要素です。

PAS 社の Vice President である Anthony J. Macri 氏は、このことが設計に及ぼす影響を次のように説明している。

「当社では、サイズ、重量そして力 (Size, Weight and Power) の頭文字である「SWAP」という略語を使用しています。航空機用のレーダーシステムと通信システムの両方で、SWAP は何をするにも本当に重要なパラメータです。

私たちの課題は、標的にビームを当てることです。特にミリメートル (mm) 波長領域では、当社の無線通信システムで非常に狭いビームを使用します。ビームの広がりは、W バンド (95GHz) で 1°のわずか数百分の 1 です。アンテナをプラットフォームに取り付けるときには、ナビゲーションデータに対するエラーバジェットがあります。ジンバルエンコーダの精度と分解能が低いと、システムの RSS 位置決め誤差が大きくなり、標的を発見できなくなります」

PAS 社の航空機用通信システムは、NASA の WB57 観測機などの航空機の高速データ通信に不可欠である。各ジンバルのエンコーダは、40,000 フィート超の高度と-40°F 未満の温度で機能する必要があり、ビームポインティングとスキャン動作が高速でできるためには、高い回転速度と加速度も不可欠だ。

通信装置やレーダー機器において重要なコンポーネントであるエンコーダには、高い信頼性が求められます。故障すると人の命にも関わることがあるためです。

解決策

PAS 社では、モノスタティックレーダーシステムと通信システムのジンバル設計を使い分けているが、いずれにも、BiSS C シリアルプロトコルと 26bit または 32bit 分解能の RESOLUTE 光学式アブソリュートエンコーダが使用されている。

「当社のレーダー製品、見通し内アンテナおよび SATCOM アンテナ、高出力マイクロ波製品には、RESOLUTE エンコーダだけを使用しています。高精度かつ高分解能で、制御ループに使用できるからです。RESOLUTE を衝突回避レーダーの一部として UH60 ブラックホークに搭載してきた理由は、ブラックホークの振動環境が本当に過酷だからです。私たちは、RESOLUTE エンコーダが非常に強い振動耐性を持っていることに気づきました。エンコーダが振動してカウントを失うようなことがあると、制御ループが損なわれてしまいます。RESOLUTE エンコーダのおかげで、求めるレベルの精度と堅牢性を達成できます」(Macri 氏)

PAS 社のモノスタティックレーダーシステムは、RF アレイフィードを底部に、2 軸ジンバルに取り付けられたダイレクトドライブモータ駆動レンズを上部に搭載しているのが特徴である。各モータには、RESA リングスケールと RESOLUTE 温度範囲拡張型 (ETR) リードヘッドが取り付けられており、レンズの位置についてのフィードバック制御を確立している。

「モータが非常に小型なので、エンコーダをずらして駆動部に直接取り付けています。リングはモータのロータに取り付けています。モータが回り始めると、機構全体の外側に配置されているエンコーダのリードヘッドに対してリングが正確に回転します。このレーダー構成のメリットは、無線エネルギーが各モータのボアを通って自由空間で伝播するということです」と Macri 氏は付け加える。

無線通信システムも似たような設計ではあるが、伝統的なスリップリング、ロータリジョイントおよび同軸メディアに特徴がある。そこではレニショーの RESA リングが中空になっていることで、各回転軸の上端に必要なスペースと機能が確保できている。

衝撃・振動試験台に載せられた PAS 社製アンテナとジンバルのアセンブリ

衝撃・振動試験台に載せられた PAS 社製アンテナとジンバルのアセンブリ

航空機の着陸装置の PAS アンテナとジンバルアセンブリ

航空機の着陸装置の PAS アンテナとジンバルアセンブリ

結果

レニショーの BiSS C プロトコル対応の RESOLUTE ETR エンコーダにより、PAS 社は幅広い用途に対応する最先端のアンテナシステムを設計および製造できるようになった。

Macri 氏は、アンテナシステムに RESOLUTE エンコーダを選択したメリットを次のように強調する。

「使いやすさ、高い精度と分解能、信頼性そして過酷な環境への適性など、本当に多くの点で RESOLUTE を気に入っています。

組立て時には、当社の技術者がすきまゲージを使用して手動でエンコーダのリードヘッドの位置を合わせるわけですが、それほど時間はかかりませんし、問題が起きても、エンコーダ用の高度診断ツールのおかげで速やかに解決することができます。当社では、オープンアーキテクチャ、使いやすさ、そして速さを理由に、エンコーダ信号出力に BiSS C シリアルプロトコルを使用しています。やはり、安全巡回冗長検査 (CRC) ビットが多いというのが大きいです。問題があればわかるからです。ライフサイクルに目を向けると、製品を迅速かつ効果的に組み上げ、高い信頼度で展開できることが肝要で、RESOLUTE ならそれが可能なのです」

PAS 社のレーダーシステムでは、レンズが 7000°/秒以上で回転し、40,000°/秒 2 超で加速する。RESOLUTE は、独自のシングルトラック設計により、非常に高い分解能を高速で実現する。この性能により、PAS 社のレーダーシステムは、業界最高水準の標的位置測定精度を達成している。

「当社では分解能 32bit のエンコーダを使用していますが、そのうちの約 18bit のみを使用しています。分解能の精度値と LSB (最下位ビット) が非常に近いことが実に好都合で、エンコーダを 18bit BiSS としてセットアップすると、精度と分解能が完璧にかみ合います。要求繰り返し精度は 1000 分の 1°です。完成品の性質上、アセンブリに含まれるコンポーネントのすべてに対してテストを行う必要があります。我々が求める仕様を上回ったのが RESOLUTE でした」(Macri 氏)

PAS 社について

カリフォルニア州に本社を置く Pacific Antenna Systems (PAS) 社は、最先端の電磁モデリングおよびシミュレーションツールを利用して、通信、SATCOM、レーダー、および高出力マイクロ波用途で使用する洗練された手頃な価格のアンテナシステムを設計している。複雑なアンテナシステムの問題の解決にも強く、設計と試作の速さを武器に、コンサルティング、設計、製造、安全分析などのサービスを提供している。

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