バーチャルリアリティ – 視覚テクノロジーの美しさ
Power Plus 社が提供する放送業界で使われる VR 向けの高精度カメラ。その絶対精度と繰り返し精度を支えているのが RLS の磁気式エンコーダとレニショーの光学式エンコーダである。
バーチャルリアリティ (VR) とは、現実世界や想像上の空間に物理的な存在を疑似体験できる、コンピュータによる仕組みであり、元々は仮想環境でのトレーニングを行うプロフェッショナルのために設計されたものである。例えばフライトシュミレータが挙げられる。フライトシュミレータであれば、操縦ミスのリスクを冒すことなくスキルを向上できる。
VR 技術で大きな役割を果たしているのが、仮想要素と実要素との間で完璧なリアルタイムの同期をとるための、カメラの位置データである。この位置データを取得するうえでレニショーエンコーダの精度と繰り返し再現性が欠かせない。Power Plus 社 (香港) のカメラ支援機器でもレニショーエンコーダが重要な役割を担っている。
放送カメラ支援機材の世界大手にして、CCTV といった有名な放送機関へのキーサプライヤである Vinten 社。その Vinten 社の唯一の認定販売店でもありサービスパートナーでもある Digital Precision Systems (DPS) 社 (中国) の子会社として Power Plus 社は事業を展開している。
その DPS 社が同社の歴史に新たな 1 ページを刻んだのが 2012 年 6 月 16 日のことだ。バーチャルグラフィックシステムプロバイダの VIZRT 社と ORAD 社 と連携し、中国の Jiuquan Satellite Launch Centre (酒泉衛星発射センター) で行われた Shenzhou-9 (神舟 9 号) の打上げの完全バーチャルライブ放送を実現した。そしてその実現には Power Plus 社のバーチャルシステムとサポートが関わっている。
Power Plus 社のディレクタである Charles Wong 氏は以下のように述べる。「我々は Vinten 社の製品とカメラサポートソリューションを組み合わせて提供する一方で、ニッチなセクタ向けに補完的な製品を開発しています」
Wong 氏は VR のワークフローについて解説する。「パンチルトヘッドにより、生放送中の安定した高精度のカメラ動作が可能になります。そして、当社のグラフィック拡張プロダクションシステムが、パンチルトヘッド内のレニショーエンコーダと Vinten VR インターフェースボックス経由でカメラの位置データを取得します。そして、バーチャルスタジオシステムがリアルタイムのストリーミング動画データとバーチャルトラッキングデータ (カメラの位置) をコンパイルし編集、そして調整して分配することで、バーチャルライブフィードをレンダリングして生成、放送します」
VR のシームレスな統合には、再現性の高いカメラの位置決めが不可欠である。Power Plus 社の高精度パンチルトヘッドとジブには、パン軸とチルト軸に、繰り返し精度 0.004arc 秒を誇るレニショーの RGH40 インクリメンタルリードヘッド と RESR リングが採用されている (なお、RGH40 と RESR は新規設計には非推奨の製品。代替製品としては、QUANTiC™ リードヘッドと RESM リングが推奨される)。RESR は、多数のサイズをラインナップし、幅広いリードヘッドと使用できるインクリメンタルリングである。軽量さと低イナーシャにより、動的なパフォーマンスを実現できる。直接取付けにより、カップリングやベアリングなどで生じるバックラッシュなども生じないようになっている。
「従来のエンコーダに比べて、非接触式のエンコーダは繰り返し精度も高く、バックラッシュもありません。バックラッシュゼロは VR のパフォーマンスに不可欠な要素です。レニショーさんのエンコーダには大満足です」(Wong 氏)Power Plus 社は Vinten 社の製品に組み込まれていることがきっかけでレニショーエンコーダを採用した。採用後、当初思っていた以上にメリットが多いことに気がついたという。「他社製のエンコーダとも比較しましたが、一番安定していて、繰り返し精度が高いのがレニショーさんのエンコーダです。Vinten 社がレニショーさんと長期にわたって協力関係にあるわけがよくわかります」(Wong 氏)
取付けがシンプルで短時間で終えられる、という点もレニショーエンコーダの売りである。いずれのリードヘッドも取付け高さの公差が広く、セットアップ LED が搭載されているため、複雑な機器がなくても簡単に取り付けられる。RESR リングの特徴として挙げられるのがロータの偏心を補正するテーパー固定 (特許取得済み) である。リングの取付けが簡単で、取付け時のミスやずれを最小限に抑えられる。
Wong 氏は以下のように続ける。「エンコーダリングの取付けは頭痛の種になりうるのです。ですが、レニショーさんのテーパー固定方式のおかげで、取付け作業が非常に楽になりました。それに、セットアップ LED を見るだけで、取付けの状態が問題ないかどうか簡単に判断できます」
また、Wong 氏はセットアップ LED がシステムの診断面でも役に立つと述べる。「以前、輸送の影響でリードヘッドがずれてしまっていることがありました。それも生放送中の直前に。ですがすぐにシステムを復旧でき、放送に間に合うことができました。今後同じような事態が起きても大丈夫だろう、と自信を持つことができました」パンチルトヘッドに使われているエンコーダは TV 放送の標準的な解像度に適合しなければならない。RESR リングの最高分解能は 43200cpr であり、今日の放送分野における最も厳しい条件でも満たすことができる。
「TV 放送での解像度は今後継続して拡大していくと予想されています。現在の高精細度 TV (HDTV) の 4 倍の解像度を誇る 4K モデルを販売しているメーカーもあります。4K が当たり前になるのがいつかはわかりませんが、エンコーダの分解能も上げていく必要があります。レニショーさんのラインナップには、最も厳しい仕様もカバーできるモデルがあるので、将来的にも安心です」(Wong 氏)
Power Plus 社のパンチルトヘッドの現行モデルの最高分解能は 1.6Mcpr であり、今日の放送業界の標準と 4K TV にも十分に対応できる数値である。また Power Plus 社は、カメラヘッドのフォーカスリングとズームリングを制御する電動デバイスについても開発を行っており、このデバイスには、レニショーの関連会社である RLS (スロベニア) の磁気式エンコーダが採用されている。RLS の RE22 はコンパクトな磁気式ロータリエンコーダで、20,000rev/min の高速動作で 13bit の分解能を誇る。
「このデバイスは 2 個のギヤモジュールから構成され、一方がカメラのフォーカスリングに、もう一方がズームリングに結合されています。このモジュールそれぞれに搭載されている RE22 から、ズーム時とフォーカス時の位置データがバーチャルスタジオシステムに送られます。RE22 エンコーダは当社のカメラヘッドモデルに簡単に組み込めます。ですがそれ以上に重要なのは、コストパフォーマンスがよいことと安定供給が確保できていることです」(Wong 氏)同氏は最後に述べる。「レニショーさんには感謝しています。いつも優れたサポートを提供していただけますし、納期や納品についても文句がありません。最近は、TONiC™ や RESOLUTE™ といったアブソリュートエンコーダを使った新プロジェクトも進めています。レニショーさんのサポートがあれば、今後も放送業界に向けて革新的な製品を開発していけると思います」