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機械設計の新たな可能性を開拓する FORTiS™ クローズドタイプエンコーダ

FORTiS™ クローズドタイプエンコーダは、工作機械 OEM、エンドユーザー、サービス企業のニーズを満たす製品です。工作機械のエンドユーザーやサービス業者に向けたアプリケーションノートについては、こちらをご覧ください。

直接的なフィードバックを機械設計に組み込む、これも動的位置制御パフォーマンスを向上する手段のひとつです

セミクローズドループ方式は、測定基準がボールねじのピッチによって部分的に形成される方式であり、工作機械の設計で広く採用されています。また、ボールねじなどが熱変位を起こすと、位置決め誤差が生じることがよく知られていますが、位置決め誤差はよほどのものでない限り温度制御を行うことで軽減が可能です。位置決めの絶対精度と繰り返し精度という点で、温度制御機能を実装した機械のほうが実装していない機械よりも、セミクローズドループ方式のパフォーマンス向上に著しく貢献します。

一方、周知の事実として、動的な位置測定において超高精度を発揮するのはフルクローズドループ方式であることが挙げられます (フルクローズドループ方式: リニアエンコーダから機械の直線軸のフィードバックを直接取得します)。位置を検出するポイントを機械端に配置することで、優れた機械をさらに高いレベルに引き上げることができるとも言えます。

公差の厳格化が求められ、機械のハイスペック化が進む中、セミクローズドループ方式かフルクローズドループ方式のどちらを採用するかといった判断は、まさに検討を重ねるべき重要な事項になっています。

プロセスコントロールの枠組みにおける基礎レベルとして考えてみても、高精度な機械仕様としてシンプルに考えてみても、クローズドループ方式の採用が増加傾向にあります。クローズドループの採用。それがメーカーの標準仕様としてであってもハイエンド用オプションとしてであっても、より広範で多角的な考察を行うきっかけになるのが FORTiS™ クローズドタイプリニアエンコーダです。

レニショー製クローズドタイプリニアエンコーダの強み

レニショーは、長年の実績から、キャリブレーション装置やプローブ、工具計測システム、ゲージングシステムの企業として認知されてきました。

ですがそれらの製品だけにとどまらず、先進的な光学技術をベースにしたオープンタイプエンコーダも開発し展開しています。各種オープンタイプエンコーダは、精密測定やモーションコントロールに広く採用され、その性能について高い評価を得ています。

工作機械や精密測定、位置測定そしてモーションコントロールといった各分野で長年にわたって経験を培ってきました。そしてその経験をもとに、既存のクローズドタイプ光学式エンコーダよりも優れたクローズドタイプリニアエンコーダを開発しました。

光学機構: FORTiS™ クローズドタイプエンコーダ








図 1.スケール (ファインピッチ (30µm)、シングルトラック) の読取りを行う超小型超高速デジタルカメラは、密封したリードヘッドに格納しています。この仕組みにより、優れた環境性能を確保しています。

過酷な環境で使用するためのクローズドタイプのリニアエンコーダは登場から長年が経過しており、すでに一般化している設計上の特徴がいくつかあります。具体的には、取付け穴の配置パターン、筐体のサイズ、リードヘッドとスケール上で動かすガイドとなる内部機構などが挙げられます。FORTiS は、既存の形状面や取付け穴のパターンを踏襲しつつ、非接触式のメカ設計によるメリットを体現しています。

FORTiS のヒステリシス誤差









図 2.FORTiS のヒステリシス誤差。試行回数 5 回(プラス方向 (正方向) とマイナス方向 (逆方向))

FORTiS と競合製品の違い

FORTiS は既存のクローズドタイプ光学式エンコーダと形状や取付け方法という点では同等です。測定長も既存機に適合するよう設計しています。例えば FORTiS-S™ (標準モデル) なら 140mm~3,240mm、FORTiS-N™ (省スペースモデル) なら 70mm~2,040mm の測定長をラインナップしています。

また、一般的なコントローラの通信プロトコルに対応しており、分解能としては 50nm~0.5nm が可能で、マルチリードヘッド仕様や機能安全仕様もご用意しています。

一方、FORTiS の内部構造には、既存のクローズドタイプリニアエンコーダとは一線を画す画期的な設計を施してあります。

スケールの素材としてはガラスではなくステンレススチールを採用しました。堅牢性が高く、機械で一般的に採用される機材に近い 10.1±0.2µm/m/℃という熱膨張率を有しています。熱膨張率が近いことで、高い測定精度を確保しつつ、熱の影響による誤差を抑えられます。また、ノイズが小さく (10nm RMS 以下のジッタ)、周期誤差 (スケール周期内の誤差) が±40nm のため、実態を忠実に反映したフィードバックが可能です。速度制御のスムーズ化や位置決めの高精度化には実態に忠実なフィードバックが欠かせません。

スケール (ファインピッチ (30µm)、シングルトラック) の読取りを行う超小型超高速デジタルカメラは、密封したリードヘッドに格納しています (図 1)。この仕組みにより、優れた環境性能を確保しています。

リードヘッドはスケールの上をスケールに接触せずに動くため、ローラーベアリングやスプリングを使った接触式機構を採用している既存設計よりも大きなアドバンテージがあります。

内部に可動部品や摺動部品がないため摩耗が生じず、スケール破損のリスクを最小限に抑え、信頼性を向上しています。長期間にわたるシステムの稼働が可能です。加えて、メカ的な接触が発生する設計で見られるヒステリシスやバックラッシュという誤差 (図 2) を抑えられているため、ワークの表面仕上げや形状の良化に貢献します。

画期的なリードヘッドの設計

開発にあたり重視したのが、振動の影響をいかに抑えるかという点です。硬い材料を加工する場合や断続的な切削を行う場合、ゆるやかな摩耗がある場合など、従来の接触式エンコーダは一定の条件下で振動の影響を受けやすいことが知られています。

それに対し、FORTiS-S、FORTiS-N の両モデルの非接触式リードヘッドでは同調質量減衰技術を採用しているため、クラストップレベルの振動耐性を備えています。

30G を超える負荷で長時間にわたって、さらにはエンコーダの共振周波数でもテストを行い、どちらのモデルも安定した同等の測定性能を維持でき、同じ過酷な環境条件に耐えられることを確認しています。リードヘッド本体 (図 3) は密封してあり、めったにないことですが、ハウジングが水やクーラントなどに浸かってしまってもそれらの浸入に対しての耐性を有しています。そのため、現場でクリーニングを行い、機械が停止してしまった状況から短時間での復帰が可能です。

FORTiS-S と FORTiS-N の断面図図 3.FORTiS-S と FORTiS-N の断面図
FORTiS-S と FORTiS-N の側面図









図 4.FORTiS-S と FORTiS-N の側面

機械への取付けを、よりシンプル、より短時間で

エンコーダを機械に取り付ける際にかかる時間と手間は、極力抑える必要があります。既存のクローズドタイプエンコーダは、ダイヤルゲージや診断装置を使わなければ取り付けられませんが、FORTiS にはそういった制約はありません。

セットアップ LED (レニショーが特許取得済み) と取付け用アクセサリで取付け作業を直感的に進められ、1 回でミスなく完了できます。一般的な接触式エンコーダと比較して、取付けにかかる時間を最大 9 割短縮でき、スペースが限られている場合でも圧倒的に短時間での取付けが可能です。

セットアップ LED は FORTiS の特長的な機能のひとつです。信号強度を点灯状態から判断できるため (青色点灯 = 信号強度最大、など)、軸を動かしながらリードヘッドのアライメントが適切であることを確認できます。

このように、取付けはオペレータが 1 人で単独で行えるほどシンプルです。その結果として、工場全体での生産フロー改善や熟練技術者の効果的な配置変更が見込めます。

また更なる機能拡張要素として、レニショーの ADT View ソフトウェアを実行している PC に標準 USB コネクタを介して接続する高度診断ツール ADTa-100 を用意しています。

軸に沿った信号強度などの主要なエンコーダの性能指標をはじめとした、より具体的な診断情報をグラフなどで視覚的に確認できます。

取付けデータを恒久的な記録として保存できるため、工作機械メーカーにとってもエンドユーザーにとっても安心です。

FORTiS エンコーダのアクセサリ図 5.取付け用アクセサリの例 (FORTiS-S)
高度診断ツール ADTa-100図 6.ADT View の画面例

省エネ、省コスト

5 年に相当する加速試験を実施し、改良を重ね、開発に至ったのが DuraSeal™ リップシールです。摩耗と工作機械で使われる潤滑油に対して高い耐性を有しており、エアパージと組み合わせることで IP64 の保護性能を発揮します。

密封性が高いことから、機械のアップタイムが延びるというメリットが見込めます。そしてそれ以外にもエアパージのエア漏れが 70% 減り、運転にかかる費用の削減、二酸化炭素排出量の削減、フィルタの長寿命化といった恩恵も生まれます。

DuraSeal リップシールの摩耗テストは、炭化粒子と細かい鉄の削りくずを合わせ面に塗布し、

1,400 万サイクル以上行いました。1,400 万サイクル後であっても、わずかな摩耗しか見られず、機能にはまったく問題ありませんでした。すなわち、エンコーダが極めて過酷な環境下におかれる研削加工のような場面でも、長期間の使用に適していることが実証された結果と言えます。

このように先進的な設計や工夫が組み込まれた FORTiS。工作機械メーカーとエンドユーザーの両方にとって技術面とビジネス面でメリットを実現そして提供するクローズドタイプリニアエンコーダです。

エアパージコストの比較図 7.FORTiS と従来のクローズドタイプエンコーダとのエアパージコストの比較